2019年1月11日掲載

フロスト&サリバン モビリティ部門リサーチアナリスト
林 更紗

 

IoTの普及があらゆる産業で進む一方で、企業に対するサイバーセキュリティの懸念も高まりを見せている。自動車業界では、インターネットと接続されたコネクテッドカーや自動運転車に向けたサイバーセキュリティ対策の重要性が高まっており、今後企業が注力すべき急成長市場への変貌が見込まれている。

 

コネクテッドカーは外部環境との接続性が高まることで、ネットワーク進入経路が増えて自動車の脆弱性が増す。中でも車車間・路車間通信(V2I/V2X)チャネルや車載オペレーティングシステム(OS)、クラウド接続がサイバー攻撃を最も受けやすい領域となる。これまでに主要自動車メーカーのコネクテッドカーモデルにて、専門家によるネットワーク侵入と既存システムの脆弱性が既に実証されている。2017年以降、自動車メーカーはセキュリティ事業の強化に向けて企業買収や提携などを進めており、将来的にはセキュリティ専門企業との提携・買収や倫理的ハッカーと共同の脆弱性評価プロジェクトへの投資に注力することが予想される。

 

自動車向けサイバーセキュリティ市場は現在は未だ初期段階にあるものの、市場投資の増加、企業間連携の強化、消費者のセキュリティ意識の高まり等に伴い、フロスト&サリバンの分析では同市場は2025年には30億米ドル規模に成長する予測である。セキュリティはコネクテッドカーにいち早く導入されるが、将来的には自動運転の乗用車及びトラックが最も重要な用途になるだろう。

 

乗用車ではサイバーセキュリティを組み込んだ自動車は既に製造されているが、2025年にはコネクテッドカーの約60%程度がセキュリティソリューションを内蔵していると予想される。また、一般データ保護規制(GDPR)をはじめとする規制強化への対応や、自動運転車への移行、サイバー攻撃を受ける経路の増加や自動車メーカーとサプライヤー間の提携の増加といった背景により、コネクテッドカーのセキュリティへの投資は2016年から2025年にかけて年平均16.4%で増加する見込みである。

 

一方商用車では、コネクテッドトラックのサイバーセキュリティは未だ開発の初期段階にあるものの、今後コネクテッドトラックの普及に伴って拡大する見通しである。自動運転トラックへの移行やフリート全体でのセキュリティに関する自動車メーカー間での懸念の高まりによって、コネクテッドトラックのセキュリティへの投資は2017年から2025年の間に年平均30.2%での増加が見込まれている。商用化の最初のビジネスモデルになると考えられており、自動運転技術の発展が同市場の成長を牽引することは間違いない。

 

現状では、自動車メーカーはセキュリティ対策をサプライヤーに大きく依存しているが、2025年以降にはメーカーはセキュリティ戦略を優先し、専門企業との連携が進んで行くだろう。また、現状のセキュリティ対策に向けた研究開発費も、現状では全体のわずか2~3%程度だが、2025年には8~10%近くがサイバーセキュリティ技術に投資される見込みである。さらに、セキュリティ脅威に関する知識の共有や進化を続ける脅威への対応を促すために、他業種からの参入や規制機関との連携も確立されるだろう。将来のサイバーセキュリティ戦略では、2025年時点では行動分析に基づいたAI(人工知能)や高度な侵入検知・防止システム(IDPS)、無線アップデート(OTA)サービス、V2Xセキュリティがサイバーセキュリティに不可欠な機能となるだろう。

 

※本コラムは、2018年11月7日付の日刊自動車新聞で掲載されたものです。

         

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