人工知能がどのように放射線科分野に影響を与え、新たな成長機会を生み出すのか
技術進化の速さを考えると、放射線学における人工知能(AI)は、初期から成熟期へと進んでいます。しかし、現在の市場はパンデミック前とは根本的に違います。この記事では、全ての市場関係者が注目すべき、放射線学におけるAIの主な動向をご紹介します。
- ソリューション開発
エンドツーエンドの、総合的な付加価値ソリューション
あくまでも放射線科医が関心のある部位を特定することを支援する、読影室で利用するソリューションを開発する時代は終わりました。現在は、疾患のための総合的なケアの継続性(care continuum)それは、症状に応じて最適な画像検査を実施でき、必要な画像を得るために最適なスキャン設定ができるソリューションです。診断および治療決定のために医師をサポートします。
- RapidAI – このアルゴリズムソリューションは、脳卒中検知にとどまらず、アプリ内で脳卒中対応チームが連絡を取ることができ、通知を受けたと迅速に処置を行うチームを編成し、検知から処置を開始する時間を短縮しますすることができます。
- VIDA – VIDA Insights(以前の名称はLungPrint)は呼吸器科分野において、疾患の早期発見、COPDやILDなどの複雑な病態の解明の迅速化、適切な治療決定の支援を行います。
複数の異常を感知するソリューション
医療従事者は、画像をダウンロード時間を短縮し、ヒューマンエラーを最小限に抑えるために、これまでに1回のスキャンで複数の異なる異常を検知するソリューションを求めています。 、偶発的な発見が命を救う可能性のある、救急医療の現場で価値を発揮する可能性があります。例を挙げると、Annalise.AIは、胸部X線画像から120を超える異常を検知できます。
リスクに基づく基礎化ソリューション
正常な患者を除外し、異常のある患者のみを特定して放射線科医が対応することにより、スキャン数を削減する支援ができるAIソリューションへの注目が高まっています。放射線学会で発表された最近のエビデンスでは、このソリューションが放射線科医の負担、特に大量の画像を確認する必要のあるマンモグラフィー検診(先進国)および結核の検診(発展途上国)における負担を大幅に削減することが示されています。また、不必要な生検などの診断検査とそのコストを削減することにも貢献します。
- 放射線科向けAIソリューションの需要
放射線科向けAIはAPACから拡大
放射線科におけるAIの導入は、新興市場、とくにアジア太平洋地域(APAC)にて顕著な増加がみられます。医療従事者は、インドのSynapsica.AIやRises.AI、フィリピンのAdvanced Abilities Solutionsといった、同地域のベンダーからソリューションを調達しています。また、APACのソリューションプロバイダーは、現地のベンダーと提携し他の新興市場への進出を進めています。例えばLunit(韓国)はINFINITTとパートナーシップを結びインドネシアへ進出し、Vuno(韓国)はPACS(医用画像管理システム)を扱うVisual Medicaと提携し、ラテンアメリカへ進出しました。
依然として需要のある独自開発のAIソリューション
多くのAIソリューションベンダーが存在するものの、依然として医療機関の独自に利用するAIソリューションの開発に対する需要はあり、そのために支援をしているベンダーもいます。例えば、AIソリューションのトレーニング用にアノテーション付きの画像を提供しているGradient Health、DICOMアノテーションソフトウェアを提供しているEncord、医療機関独自のAIソリューション開発支援のためPenn Medicineと提携したPaxera Healthなどです。
プラットフォームおよびマーケットプレイスは拡大するものの、それらに対する反応は鈍い
2017年以降、複数の企業が様々なベンダーのAIサービスを提供するAIマーケットプレイスを立ち上げました。マーケットプレイスを活用した先駆的な企業には、Blackford AnalysisやNuance Health(現マイクロソフト傘下)、Envoy AI(現Symphony AIグループ傘下で、Eurekaに名称変更)などがあります。以降、Arterys、IBM、Fovia.AI、Incepto [欧州]、CARPL(Mahajan Imaging傘下/インド)、Doctor Net [日本]、Vizyon(ブロックチェーンおよび遠隔放射線診断)、Wingspan [中国]などが台頭しました。さらに最近では、Curie Platformを開発したEnlitic、神経科に特化したQMentaなどがあります。
しかし、マーケットプレイスを活用するアプローチには、いまだ導入の障壁が存在します。大手企業は、自社の画像ワークフローにより事務・運用プロセス管理を支援するため、エンドユーザーに多くの付加価値のあるソリューションを提供するプラットフォームモデルへとシフトしています。より高い価値の提供および投資回収率を考えると、プラットフォームモデルが優位ではありますが、プラットフォームモデルが放射線科および医療機関のCFOに好まれるアプローチであるかどうかは、様子を見なければならないでしょう。放射線科に限ったことではありませんが、Philips(HealthSuite)、GE(Edison)がこのシフトをリードしています。
- ベンダーの新たな動向
新たなパートナーシップ
過去5年間で、放射線科向けAIおよびその商業エコシステムは複雑性を増し、単体で成功を収めたソリューションプロバイダーは存在しません。新たなユースケースの台頭、激化する競争により、市場シェア獲得のためにAIソリューションプロバイダーの間でこれまでにない提携が見られるようになるでしょう。近年結ばれたパートナーシップは技術協力(ScImageおよびDiA Imaging Analysisの画像ビューアーの機能向上)、流通(富士フィルムX線装置向けにAnnalise.AIのソリューションを販売)、研究開発(精密腫瘍学におけるMayo ClinicとVunoの提携)、エンドツーエンドソリューションの提供(AstraZenecaおよびOxipit.AI)など様々です。
市場勢力図に現在興味深い変化が起きています。Artyra、Mireye、Vinbrainなどの様々な新たなベンダーが、特に新興市場に参入した一方で、RadnetやNanoxなどの主要企業は相次いで買収を実施し、市場における地位を確立しています。また、幾つかの企業はこの市場から完全に撤退しました。MaxQ.AIは他の事業に軸を移し、IBMはプライベートエクイティへWatson Healthを売却しました。
- 成長の障壁:償還、資金調達およびIPO
保険償還を適用するための大きな障壁は、先進国市場でさえもまだ解決できていません。市場では、話題となった脳卒中AIに対するNTAPの支払い以降、大きな進展はありません。
現在この分野の資金調達パターンは不安定で、調達が実行された数は大幅に減少しています。これは世界的な景気低迷によると考えられます。 AIスタートアップへのバランスのと資金配分が見られました。そのような状況でも、過去2年の業績が好調だったLunitは、新規株式公開(IPO)を申請しました。
結論
コンピュータ技術の広範な進化は、AIの放射線科分野への浸透に貢献しました。多くの企業がAIの可能性を広げ、AIにより提供できる医療が拡大し続けています。放射線科の関係者、そして医療分野全般にとって注目に値します。
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広報マーケティング担当 三田