フロスト&サリバンのパートナー兼ヘルスケア&ライフサイエンス部門シニアバイスプレジデント、リーニタ・ダスとのインタビュー

 

Sheconomy(She+economy女性が動かす経済)はほぼ全ての経済分野に影響を与えます。なぜなら、より多くの教育レベルの高い女性が毎年、世界の労働力として加わっているからです。購買力の向上により、女性は企業の成長を推進する労働力、そして小売消費の見込み客という、経済活動の両面で重要な存在となっています。しかし、女性が活躍する経済は、経済を活性させるメガトレンドというだけではありません。これは、女性が何世代にもわたり家庭、社会、職場で直面した不平等を解決する大きな力でもあります。

 

市場における女性、個人としての女性の両面からSheconomyに光を当てるため、フロスト&サリバン、パートナー兼ヘルスケア&ライフサイエンス部門のシニアバイスプレジデントであり、Sheconomyの専門家でもある、リーニタ・ダスにインタビュー形式で話を聞きました。

 

 

Q: Sheconomyは、世界の経済を推進する有望な成長エンジンというだけではありません。家庭、組織、ビジネスにおけるジェンダーギャップ、不平等、アンコンシャス・バイアス解消の力にもなります。経済的、社会的な側面を含む広い意味で、Sheconomyをどのように定義づけますか。

 

リーニタ・ダス(RD): Sheconomyという言葉は、2007年に初めて使われました。観光、ヘルスケア、食、美容、文化、メディア、エンターテイメントなどの業界において、女性消費者の増加により推進される、新しい経済のことを指します。これは、女性が高学歴になるほど、より高度な労働力として、より積極的に労働市場を参入するという論理的解釈から生まれたものです。そして購買力の増加につながり、メガトレンド、ビジネスの変革、経済社会に、そしてひいては世界に影響を与えます。

 

Q: それから15年後の2022年には、Sheconomyはグローバル社会において重要な存在となり、ビジネスや国をこれまで以上に急速に成長させる手助けとなる成長機会を生み出しています。何がSheconomyを推進しているのでしょうか。

 

RD: 第一に、現在、教育を受ける女性が多くなり、これまでにないほど学士号を取得している女性がいることです。米国において学士号取得という点では、2019年はジェンダーパリティ(ジェンダーの同等)の転換点となる年でした。過去20年、女性の大学入学率は男性を超えています。

 

第二に、女性が自身の人生に関して異なる選択をするようになったことです。独身女性の数は、人口増加率を超える勢いで拡大しています。例えば、私のチームが実施した調査では、2030年までに、25歳から44歳までの購買力のある働く女性の45%が独身であるという結果が出ました。これは注目すべき数字です。それでは、なぜこのような変化が今起きているのでしょうか。

 

近年、女性は結婚を遅らせたり、独身でいることを選択したり、離婚をすることもあります。出産を遅らせたり、生む子供の数を少なくする選択をすることもあります。米国では、2000年の結婚平均年齢は25歳でしたが、2020年までに28歳に上昇しました。私たちが実施した調査に基づく予測によると、2035年までに、この数字は35歳にまで上昇します。現在女性はより多くのお金を稼ぎ、ヘルスケア関連の重要な消費者です。そして自動車、家、消費者製品の主な購入者でもあります。1997年以降に生まれたZ世代の女性は、ボディイメージ、メイクアップ、スポーツ、家庭、仕事、キャリアなどの分野でのソーシャルメディアの重要なインフルエンサーとして、新たな基準とトレンドを創り出しています。

 

Q: 職場における女性についてお話ししましょう。より多くの女性が職場にいることは、ビジネスにどのような影響を与えたのでしょうか。

 

RD: 家庭では、主に子供や高齢な家族のために、ヘルスケアに関する意思決定の80%を女性が行います。当然ですが、独身女性は既婚女性と比べ、個人的出費がはるかに多いです。中国が良い例で、女性の支出は、オンライン小売販売を中心に81%増加しました。2010年以降、女性は政府、民間の上級管理職などで存在感を高めてきました。米国や欧州と比べても、中国、インド、シンガポールなどのアジア諸国や、中東でさえも女性のプレゼンスは大きく高まっているのです。

 

男女平等を重視する企業は、あらゆる点で他社より優れています。米国において非常に多くの研究で、男性と比較して、女性はビジネスの投資に対して35%も高いリターンを生み出すことが発表されています。米Forbes誌は最近、テック企業を運営している女性は男性と比較して、35%高いROI、12%高い売り上げを生み出しているという記事を掲載しました。これは、女性がより多くの収益を生み出せることを意味しています。この収益をより良い世界、そして家族、社会、人が繁栄するより強固な世界を創り出すために使うことができます。

 

また、女性はより多くの企業を立ち上げており、それはこれまでにない高い割合です。そして、米国のマイノリティ女性は、白人女性よりも多くの割合で企業を立ち上げています。私が最近読んだFast Companyのレポートによると、2019年に女性により設立された新しい企業の89%は、有色人種の女性によるものでした。

 

女性のエンパワーメントは食料、セキュリティ、家庭福祉に対し大きな影響を与えます。複数の研究で、女性は男性よりも家族の食料、ヘルスケア、教育にお金を使う傾向にあることが示されています。女性の社会的、経済的地位は、その子供が教育を修了し、健康で貧困のない成人期を送ることができるかの最適な指標と考えられています。ジェンダー平等および女性のエンパワーメント促進は自動的に空腹と極度の貧困を減らします。

 

2050年に向けて、ジェンダーギャップを埋めることは、農業の生産性を向上させ、貧困と空腹を減らし、経済成長を推進し、多くの恩恵がもたらされます。私たちは根底からの変革をいくつか行ってきたと信じています。私たちが今後30年間に世界の”SHE”(女性)の影響力が拡大することを望むかぎり、この変革は継続していくでしょう。

 

Q: 新型コロナのパンデミックは、働く女性、育児施設閉鎖により特にワーキングマザーにとって辛いものでした。新型コロナはワーキングファーザーにも影響を与えましたが、複数の研究で、育児危機により、労働時間を減らした、もしくは仕事を辞めたワーキングマザーがいたことが明らかになりました。Sheconomyの成長に対する新型コロナの短中期的な影響をどのようにお考えですか。

 

RD:新型コロナは世界中の女性に、様々な形で大きな挫折を与えました。女性にとって、住んでいる場所や社会経済階級に関係なく、一夜にして何もかもが変わったのです。私たちは支援システム、育児支援へのアクセスを失いました。子供、そして介護が必要な両親や高齢者が重荷となりました。サービス、ホスピタリティ、小売、航空業界などで、低賃金の職についている多くが私たち女性なのです。わずか1年で、米国のみでも、職を失ったのは男性が180万人であるのに対し、女性は240万人にもなりました。その中でも特に黒人、アジア系、ヒスパニックの女性への打撃は大きなものでした。

 

パンデミック下に2500人の女性を対象に私たちが実施した調査の結果は驚くべきものでした。世界の4人に1人の女性は、何らかの性的虐待または感情的虐待を受けたことがあり、70%の女性が、サポート体制がほとんどない状況で、ある程度の不安やうつに悩まされたと回答したのです。さらに新興国では、適切な避妊へのアクセスがないために、多くの予期せぬ妊娠や産婦死亡が起きていました。危機下では、プライマリーケアサービスのなかで真っ先に失われるのが家族計画です。新興国では2500万の安全でない中絶が行われました。

 

新型コロナは女性に被害をもたらしたものの、これまでにないほどSheconomyを推進させたと私は感じています。パンデミックはどんな人に対しても、同じように襲ってきます。希望の兆しは、多くの女性が自ら表舞台に立ち、「私たちはこの危機を生き延び、貢献し、自らテーブルにつきたい。誰かにお願いすることなく」、と言っていることです。

 

女性は経済の再建に力を注いでいます。そして私たちは、世界のあらゆる場所で女性が導かれている、とてつもなく大きな勢いを目の当たりにしているのです。

 

Rise of the Sheconomy(Sheconomyの台頭)パート2(英語)を読む

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英語原文:”The Rise of Sheconomy: Women’s Increasing Impact on Business, Culture, and Healthcare”

 

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広報マーケティング担当 三田

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