ソフトウェアに定義された車両が一般的になると予測されるなか、OTAは自動車メーカーにとって、利便性およびコスト効率性、アプリケーション更新に必要な技術になりつつある。
スマホ業界からの技術要素は、コネクテッドカー市場を変革しています。スマホ業界のように、ユーザーの行動および期待の進化が、自動車業界におけるHMI(ヒューマンマシンインターフェース)駆動のアプリケーションおよび体験を支えています。このようなイノベーションはパンデミック後に注目され、コネクテッドカーの業界関係者にプラスの影響を与えました。
このような背景において、私達はVolvoの最近の発表について注目すべきでしょう。Volvoは2023年発売モデルに、遠隔からOTA(無線経由)技術を使ってソフトウェアおよびオペレーティングシステムの更新ができる、Android Automotiveを導入することを発表しました。Volvo初の全電動車両である XC40 RechargeおよびXC60は、車両と顧客のデジタルエコシステムのシームレスな統合を実現するソフトウェア更新機能の恩恵を受ける最初のモデルとなります。継続的な更新により、パーソナライズされた体験、車内アプリ機能の向上、最新技術へのアクセス、そして優れたコネクテッドサービスをサポートします。
Android Automotiveの導入は、2030年までに完全に電動化へシフトするというVolvoの電動化計画の中核でもあります。私達はこれまでに、EVへのシフトにより、自動車メーカーは内蔵されたテレマティクスを通して重要なEVサービスを提供しなければならなくなるとお伝えしてきました。特に、車両の電動化により、コネクテッドOTAアプリの更新は顧客の信頼およびエネルギー管理を向上させます。バッテリーの温度の効果的な監視および保守により、バッテリーのプレヒート機能を利用し急速充電に対応しつつ、航続距離の向上を実現します。EVの充電ステーションの推奨や運転手への事前アラート、運転計画の簡易化、充電負荷管理などの機能により、顧客の信頼を向上させます。これらの機能により、顧客の移動計画を効率化しつつ、コストとストレスを低減させるサポートをします。
世界のコネクテッドカー市場の最新の動向および予測の詳細は、弊社の調査レポート、Global Connected Cars Outlook, 2021(世界のコネクテッドカーの見通し、2021年)をご覧ください。同レポートに関するプライベートブリーフィングの開催も可能です。ブリーフィングに関する情報は、[email protected]にご連絡ください。
コネクティビティの未来
フロスト&サリバンは、ソフトウェアにより定義された車両(SDV)および革新的なビジネスモデルの開発を業界関係者が加速させる必要性を強調しつつ、2025年までに世界のコネクテッドカー市場の潜在的な売上は、150億から200億ドルになると予測します。
現在のコネクテッドカー業界の直面する最も大きな課題は、ソフトウェアおよびコネクテッドサービスのプラットフォームの投資利益率です。自動車メーカーにとって、製品を社内で開発するか、アウトソーシングするか、その議論は続いています。社内で開発したいと考えるメーカーはいくつか存在するものの、多くのメーカーは、自身の求めるコネクティビティソフトウェアをベンダーと協力して開発するという選択肢も考えており、このことは、Google、Microsoft、Amazonといった巨大テック企業も含め、サプライヤーに機会をもたらします。Volvo、Audi、ルノー・日産・三菱アライアンスといった自動車メーカーは、基盤のプラットフォームとしてAndroid Automotive OSを利用しインフォテイメントシステムを開発するために、すでにGoogleと提携しました。トヨタ、BMWおよびStellantisは、固定されたオンプレミス型のITインフラから、AWSを基盤としたより効率的な従量課金型(Pay-as-you-go)のサーバー無しリソースへとシフトすることにより、コネクテッドカーのコストを削減しました。
パーソナライズされたソリューションに対する消費者の需要が拡大することにより、車内のコネクティビティの内蔵、生体情報に基づく健康管理、音声・デジタル支援、ジェスチャー認識などの革新的な機能の導入が加速するでしょう。市場は変化を続けており、テクノロジー企業へと進化する自動車メーカーもあれば、テクノロジー企業との協調路線を進む自動車メーカーもあるでしょう。次世代のプラットフォームおよびビジネスモデルの中核となる要素が開発され、車両に利用できるようになったとき、ビジネスの変革が起きます。5G、ワイドスクリーンディスプレイ、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、データレイク、クラウドコンピューティングといったテクノロジーが、最前線および中央に立つ存在となるでしょう。
フロスト&サリバンの視点
このような動向のなか、OTAは、レガシーとなった電気・電子(E/E)アーキテクチャ、セキュリティに対する脅威、高いデータコスト、4Gネットワークによる更新にかかる時間などの課題を克服するために重要な役割を担うでしょう。
現在、インフォテイメント、テレマティクス、コントロールユニット(TCU)、地図関連の更新がOTAの中心であり、フロスト&サリバンは、機能の無線での更新、features over the air (FOTA)への移行を徐々に拡大していくと予測します。
車内コネクティビティの進展が予想されることから、多くのサイバーセキュリティ企業やOTA企業が市場に参入し、ティア1企業にも、市場での存在感を維持するためにOTA能力を持つ企業を買収した企業があります。
私達は、2025年までに、OTAが重要なサービス提供ソリューションとして台頭し、主にソフトウェア関連の車両リコールを防止するための利用からオンデマンド機能(FoD)ソリューションへと移行していくと予測します。また私達の調査では、OTAによる更新は、安全かつ追跡可能なソフトウェア更新に対応するために、UNECE WP.29サイバーセキュリティ規制のようなグローバルな規制の対象になる可能性があることが、強調して報告されています。
自動車メーカーは、例えば、OTAによる車内照明の更新など、基本機能の更新にFoDを導入するでしょう。5Gを活用した完全な5G機能を持つ車両では、5Gを活用したTCUによりOTAの更新を受信するようになるでしょう。
突き詰めると、OTAは、パーソナライズ化を進める上で重要な技術として台頭し、社内体験向上のための基盤となるでしょう。この技術はシームレスかつ安全な機能、そして運転支援システムやパワートレインに関連したセキュリティ更新などを支援することになるでしょう。
OTAは、ターゲットとするインフォテイメントにおいてアプリケーション強化を容易にし、地図の更新によりナビゲーションを向上させるでしょう。また、EVメーカーの市場参入戦略を加速させるでしょう。最後に、車が車輪つきのコンピューターに変わるなか、OTAは個人の機密情報保護を確実にするために取り組んでいくでしょう。
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カマレシュ・モハナランガムは、フロスト&サリバン、モビリティ部門のプログラムマネージャーである。戦略的コンサルティングおよび市場分析の10年以上にわたる経験を通し、自動車業界におけるシャーシおよび安全性、自動運転領域に専門性を有する。
フロスト&サリバン モビリティ部門コミュニケーション&コンテンツシニアマネージャー