2019年10月に開催された東京モーターショー2019では多くの自動車メーカーや部品サプライヤーが最新技術を盛り込んだコンセプトカーなどを展示した。その中でも特にトラックはデジタル技術の発展によってコネクテッド機能の拡充が顕著にみられ、人手不足が課題となっている物流業界では期待されている分野となっている。また、5Gを利用する高速通信技術によって、大量の走行データを活用する新たなサービスも生んでいる。進化を続けるコネクテッドトラック市場の現状を整理し、今後の市場の動きについて考えてゆく。

通信システムを搭載しているトラックをコネクテッドトラックと定義した場合、グローバルでは2018年の約2300万台から2025年には約5600万台に増加する見込みである(当社調べ)。2018年時点ではコネクテッドトラック市場の6割以上は欧米などの先進国の多い地域で広がりを見せており、この傾向は今後も継続するものと考えられる。近年ではEコマース市場の拡大に伴い輸送量が拡大していることに加え、日本の場合はトラックの運転手不足が叫ばれるなど、物流業界では業務の効率化が必須という状況である。そこで様々な通信技術をトラックに搭載したコネクテッドトラックによる業務効率の改善が試みられている。その一例として、いすゞ自動車は車両状況をスマートフォンで確認できる機能を用いることにより、二人必要だった点検作業を一人で実施できる機能を開発している。また高速通信技術と高度な自動運転技術を利用したトラックの隊列走行も業務効率改善の策として期待されている。2019年にはソフトバンクによる5G技術を用いた高速道路での実証実験がされ、実用化が着実に進んでいる。

コネクテッドトラック市場における主要なプレイヤーには、商用車メーカー以外に、将来的にはトラックからのデータを収益につなげる企業が存在感を増すと考えられる。従来は業務効率改善のためにトラックから収集されたデータは、データ収集元である企業のみに利用される構造であった。しかし今後は、蓄積されていたデータはテレマティクスサービスプロバイダー(TSP)と呼ばれる組織に集められ、より多くの企業が利用できるサービスとして展開される。例えば、カナダに本拠地を置くTSPの一つであるGeotabは、従来のトラックに通信用デバイスを後付けで設置し、それにより収集したデータをもとに、最も事故が発生しやすい道路などの情報を提供している。また同社は、運転手の生産性を測定するサービスを展開しており、トラック単体ではなく人員のマネジメントのためにもデータを利用している。その他にも、都心部での混雑状況とトラックの配送状況を利用することで効率的な配送や温室効果ガスの低減などの効果が期待されている。

コネクテッドトラック市場はトラックを製造する技術、通信技術や自動運転技術に加えてデータのマネタイズといったように、幅の広い市場と捉えることができる。トラックをはじめとした商用車から得ることのできるデータの多くは製品情報やサプライチェーンなど、比較的ビジネスの根幹に近い情報である。物流業界の人手不足という課題解決の手段だけではなく、多方面へとビジネスを拡大する機会をも有しているコネクテッドトラック市場は魅力的といえる。