2024年4月、フロスト&サリバンは、中国における貨物・物流需要の急増が中国商用トラック産業の回復に拍車をかけるとする調査結果を発表した。
トラックの電動化は大きなトレンドとして浮上しており、電動パワートレインは技術改善と政府の支援を背景に、2030年には100万台に達するとみられている。
中国の商用トラック販売台数は、2021年の370万台から2022年には240万台に急減し、前年比35.3%減となった。これは、経済成長の減速、貿易取引の減少、製造活動の低迷、パンデミックの影響、原油価格の上昇、不安定な不動産セクター、排ガス規制の強化、市場需要の縮小などが要因となっている。大型トラック・セグメントは特に大きな打撃を受け、市場全体に占めるシェアが2020年の40.7%から2022年には28.2%に縮小する中で、前年比51.8%の減少を記録した。
しかし、中国の商用トラック市場がこの低迷から立ち直りつつある兆候が見られる。2030年にはほぼ倍増の430万台が出荷されると予測されている。この復活の主な原動力は、急増している輸送・物流ニーズ、特に電子商取引の小売配送、より厳しい新しい排出基準に合わせるための定期的なトラック買い替えの必要性、そして補助金やインセンティブという形での政府の後押しであろう。
普及が進む電動パワートレイン
60%以上のシェアを持つディーゼルは、商用トラックで最も人気のあるパワートレインの選択肢である。ガソリンは約31%で、小型トラックで広く使用されている2番目に人気のあるパワートレインである。中国の商用トラック市場全体の約68%を占める最大セグメントの小型トラックは、ディーゼル、ガソリン、電気、天然ガスなど、多様なパワートレインを使用している。このセグメントでは走行距離が比較的短いため、電気充電ソリューションや天然ガスの普及が進んでいる。
現在、バッテリー電気自動車(BEV)は市場のパワートレインの約3.3%を占めている。主に小型トラックセグメントで使用されるプラグインハイブリッド車(PHEV)と、主に大型トラックセグメントで使用される燃料電池電気自動車(FCEV)は、合わせてパワートレイン全体の0.2%を占めている。フロスト&サリバンは、技術改善と政府の支援を背景に、電動パワートレインの採用台数が2022年の0.08万台から2030年には100万台に増加すると予測している。
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市場集中を削ぐ激しい競争
競争は熾烈で、中国のOEMが支配的である。約50社のOEMが、コスト、性能、政府補助金による支援、技術、信頼性を重要な競争要因として、収益のシェアを争っている。2022年には、上位5社(フォトン、東風、CNHTC、JAC、FAW Jiefang)が市場の55%以上を占め、45社が残りの市場シェアをめぐって争うことになる。長期的には、競争の激化は市場の集中を削いでいくだろう。この傾向はすでに明らかで、上位5社のOEMのシェアは2021年の60.1%から2022年には55.2%に縮小している。
現在、各セグメント内での集中度は高い。例えば、中型トラック・セグメントでは、2022年のシェアは上位5社で88.7%を占める。Fotonが中型・小型トラック・セグメントを支配する一方、CNHTCは大型トラック・セグメントをリードしている。
今後の展望
電動パワートレイン・ソリューションは、今後5~6年でさらに顕著になるだろう。小型トラック・セグメントにおけるFCEVの販売台数は、2021年のわずか3台から2022年には660台以上に増加している。バッテリースワップ技術も、特に大型トラックで普及するだろう。こうした動向を踏まえ、フロスト&サリバンは、2030年までに中国の商用トラック市場全体の25%弱を電動パワートレインが占めると予測している。普及を加速させるためには、市場関係者は中核能力の開発、サプライチェーンの強化、充電インフラの強化、アプリケーション基盤の拡大に注力する必要がある。
もうひとつの重要な成長触媒は、トラックの定期的な買い替えニーズである。中国政府は、2025年までに稼働中の商用トラックの40%以上を電気自動車と中国VIの排出ガス基準に適合させる意向を表明している。参加企業は、関連する機会を活用するために、更新サイクルと政策主導サイクルを監視する必要がある。
道路輸送は中国の貨物・物流サービスの中心である。したがって、商用トラック事業者は、デジタル貨物仲介など、生産性とパフォーマンスを高めるデジタル・ツールを取り入れる必要がある。一方、苦境にある不動産・建設エンドユーザー・セクターからのダンプトラックやミキサートラック需要の落ち込みを相殺するため、市場参加者は、より幅広い貨物需要に対応できる、より専門的で多様化した商用トラックを提供すべきである。