コロナウイルスCovid-19の人々の健康や生活、そして経済や各業界への影響は、ここ数か月、ニュースや新聞等で毎日報道されている。自動車業界については、部品供給問題や需要減少による生産調整や工場の稼働停止が余儀なくされている。今回は別の視点からコロナウイルスの影響について考えてみたい。
過去10年、自動車業界は、電動化など環境「グリーン」に積極的に取り組んできた。今後10年は、車内のヘルス・ウェルネス・ウェルビーイング(HWW)機能「ピンク」がより注目されるかもしれない。
近年、技術の進歩により、ヘルスケアは病院だけでなく、活動量計などのウェアラブルやその他デバイスにより家庭や自動車の中でも容易に健康をモニタリングできるようになっている。将来、自動運転技術の発展は、運転手や乗員は車内での自由度が増し、自動車は単なる移動手段ではなく、心身を向上させる手段になりうる。これまでも自動車メーカーはHWW機能を開発してきてはいるが、今回のコロナウイルスの影響で、さらに車内のHWW機能の開発や装備が加速する可能性がある。
既に採用が始まっているヘルス・ウェルネス機能としては、車内の空気清浄や、運転手の状態を計測・モニタリングすることで居眠りや気絶など発見して緊急時のアシスタントをする機能である。他には、人間工学に基づいた座席や、ヒーターやマッサージ機能の付いたスマートシートによる筋肉セラピーや、運動ができるリアシートなどもあるだろう。また、位置サービスを利用したアレルギー警告や、血糖値や血圧、心拍数を計測・モニタリングするバイオセンサーといったウェルネス機能も充実するであろう。ウェルビーイング機能としては、飲酒運転防止や、眠気監視、気分に応じた車内環境(音、明るさ、室温など)の調整機能などを挙げることができる。
車内でHWW機能を提供するには、基本的に、ビルトイン(据付)、持込、そしてクラウドベースの3つの方法がある。
ビルトインのHWW機能は、自動車メーカーが自動車のハードウェアに組み込むより長期的なソリューションである。これには、インフォテイメントによる機能やフォードの花粉センサーなどが含まれる。
HWW機能の周辺統合は、BMWのスマートウォッチやヒュンダイのグーグルグラスの統合など、スマートホンやスマートウォッチを自動車に持ち込むことで可能になる。
クラウドベースのソリューションでは、HWW機能は、GMの4G LTEコネクティビティのように安全な情報技術プラットフォームを介して提供される。
ビルトイン機能は導入に時間がかかるの対し、持込とクラウドベースは既存のモバイル、ウェアラブル技術を使って導入できるので短期的に成長機会をとらえることができる。
これまで、ヘルス・ウェルネス・ウェルビーイングは、自動車業界においてはニッチな分野であったが、技術の進歩に伴い、今後5年以内に、安全性や快適性と同様に主要な分野になるであろう。コロナウイルスのパンデミックにより、GMやフォードが医療機器メーカーと組んで人工呼吸器を生産し、中国の電気自動車メーカーのBYDがマスクの生産をするなど自動車業界のヘルス・ウェルネス・ウェルビーイングの開発は加速しそうである。