OpenAIの画期的なAIチャットボットにより、顧客エンゲージメントの向上、より安全な車両、全体的な運転体験の強化など、自動車エコシステムの変革が約束されていますが、関係者はこのプロセスを慎重に進める必要があります
人工知能(AI)機能の次の大きな飛躍と謳われているのが、ChatGPTです。マイクロソフトの支援を受けたスタートアップ、OpenAIが開発した自然言語処理(NLP)ベースのAIチャットボットは、2022年11月の発売から1週間で100万人を超えるユーザーを獲得しました。すでに教育から法律、マーケティングから健康、出版から旅行まで、さまざまな分野で使用例が見られます。推進派がAIが複数の分野に付加価値を与え、革命をもたらす強力なゲームチェンジャーになると主張する一方、抑止派は、何百万人による手作業の仕事がなくなってしまう可能性を持つ、その破壊的効果に警戒を続けています。これによる効果は、自動車産業においてどのように展開されるのでしょうか?他の業界と同様、ChatGPTが大きな変化をもたらし、テクノロジー主導のイノベーション、新しいアプリケーション、ビジネスモデルの舞台となることは間違いありません。
顧客エンゲージメントの強化
自動車小売りのオンライン化が進む中、ChatGPTのようなAIチャットボットの利用により、より有意義な顧客エンゲージメントの実現の可能性が挙げられます。何百もの車の選択肢の中から顧客を探し出すのではなく、顧客の履歴や好みに基づいた正確な情報と、ターゲットを絞った提案の提供が先ずは可能となります。また、保険や金融パッケージのカスタマイズや、支払い手続きもスムーズになることで、自動車購入までの時間を大幅に短縮し、顧客満足度の向上を図ることができます。
さらにChatGPTのようなAIツールは、一貫して高い品質と均一基準のカスタマーサポートを可能にします。加えて24時間365日利用可能で、動的に変化する顧客サービス要件に対応できるといった利点もあります。
自動車関連企業にとっては、ルーティンワークの多くをこなすことで、業務効率の向上が期待できます。この場合、より複雑な問題を解決する必要がある場合にのみ、人間のカスタマーサービス担当者にエスカレーションすることができます。
より安全な車両
ChatGPTのようなAIツールが、車内の安全機能を強化します。例えば、ドライバーは最も重要な運転に集中しながら、ChatGPTの高度な会話機能により、さまざまな問い合わせに最適な答えを得ることができます。また、車載インフォテインメントシステムとの連携することにより、よりスムーズで直感的な対話が可能となり、車両の安全性のみならずドライビングエクスペリエンスにも貢献します。
AIの特徴の一つとして、データを迅速に処理・分析し、異なるデータストリームを統合的に結びつける能力が挙げられます。自動車の場合、データはライダー、レーダー、カメラなど複数のセンサーによって生成されます。そこで、AIがセンサーデータを瞬時に合成し、ドライバーに実用的なインサイトを提供することで、交通や道路の危険性を警告し、先回りした行動を取ることができるようになります。さらに技術が進歩することで、この機能はスマートで安全な自動運転車の支柱となる可能性があります。
また、AIを活用した事故通知・報告機能は、救急隊のより迅速で効果的な対応を可能にするとともに、自動車保険会社にとっては、責任追及のための強力なリソースとなる可能性があります。
さらに、ChatGPTは、自動車整備会社や修理会社の正確な損害評価の支援が可能です。また、車両データ解析に基づく予知保全により、大幅なコスト削減と車両寿命の伸長を実現することもできるのです。
安全性だけでなく、ChatGPTはナビゲーションの強化も可能です。ここでもAIチャットボットの会話能力を活用することで、ドライバーは音声コマンドを使用して、より簡単に車のナビゲーションシステムと対話できるようになります。
推進には注意が必要
どうやら、顧客から自動車業界の関係者、ドライバーから車両、自動車メーカーから保険会社、ナビゲーションから安全機能、修理・メンテナンス会社から自動車部品メーカーまで、ChatGPTはすべてをカバーしているようです。
Google、アリババ、JD.comはAIチャットボットの開発を急ピッチで進めており、同様のAIチャットボットの開発競争が激化していることも不思議ではありません。バイドゥは、新しい会話型AIボット「ERNIE Bot」を組み込んだEVモデルの発売に向けて準備を進めているとの情報もあります。ChatGPTを模倣したERNIEを車載音声アシスタントと統合することで、より充実したユーザー体験をサポートするという戦略です。
しかし、それだけではありません。 最近のニュースでは、ChatGPTがインドの道路に「ぴったり」な車を選んだことが取り上げられました。このAIチャットボットは、インドの厳しい道路状況に耐えられる、コンパクト、手頃な価格、低燃費、高い地上高、堅牢なサスペンション、安全機能といった特徴を持つ車を公然と選び出しました。
ChatGPTには評価すべき点が多くありますが、懸念点がないとは言い切れません。その最たるものが、データのプライバシーとセキュリティです。AIアプリの開発では、パーソナライズされた体験と機密性の高い個人データの保護との間の両立性が注目されるでしょう。また、説明責任に関する課題も存在します。チャットボットが誤った回答や不正確な回答をした場合、どこに責任の所在があるのでしょうか?
ChatGPTのようなAIチャットボットが、自動車のエコシステムをポジティブな形で変革する大きな可能性を秘めていることは間違いありません。しかし自動車業界は、人間の創意工夫と技術革新を融合させ、全体としてより豊かな体験を提供するための適切なバランスを取る必要があるでしょう。
JOE PRAVEEN VIJAYAKUMAR
市場調査や戦略策定において15年の経験を持つ。自動車産業に影響を与える新たなトレンドや、輸送の未来を形作るメガトレンド、産業関連の地政学的政策や国際貿易協定の発掘を得意とする。自動車、鉄道、航空など輸送分野全般に関する幅広い知識を持ち、フロスト&サリバンでUrban Air Mobility/Flying Carsの研究を先駆的に行っています。
【フロスト&サリバンについて(本社:米国)】
フロスト&サリバンは、60年以上に渡り、フォーチュン1,000社、行政機関、投資家に向け、持続可能な成長戦略の策定をご支援してきました。経済情勢の変化に即応すると共に、破壊的技術を見出し、新たなビジネスモデルを立案することで、将来の成功へと導く革新的な成長機会を創り出します。
【フロスト・アンド・サリバン・ジャパン株式会社】
設立:2014年1月
沿革:2009年3月 日本支社「フロスト&サリバン インターナショナル」設立
2014年1月 日本法人「フロスト&サリバン ジャパン株式会社」設立
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